
業務内容や気分にあわせて働く場所・時間を自由に選択する、ABWという概念が普及しつつある今、新たなキーワードとして「インクルーシブデザイン」や「ニューロダイバーシティ」に注目が集まっています。
ただし、言葉として見聞きしたことはあっても「インクルーシブデザインってどのようなもの?」「なぜ重視されているの?」といった疑問を感じている経営者の方も多いのではないでしょうか。
そこでこの記事では、インクルーシブなオフィスが求められる理由や、最新トレンドであるニューロダイバーシティに配慮するためのポイント、多様性を生かすオフィスデザインのコツをまとめました。
INDEX
1.インクルーシブなオフィスとは?注目される背景
2.インクルーシブなオフィスに欠かせないニューロダイバーシティへの配慮
3.インクルーシブなオフィスづくりのポイント
4.まとめ
1.インクルーシブなオフィスとは?注目される背景
インクルーシブなオフィスとは、高齢者や障がい者、外国人など、これまでのデザインプロセスでは届きにくかった多様な人々のニーズや価値観を基に設計されたインクルーシブデザインを採用しているオフィスのことです。
インクルーシブとは英語で「全てを包んだ、包含的な」という意味を持つ言葉です。
従来のオフィスはマジョリティ(多数派)の利便性を中心に考えられることが多く、マイノリティ(少数派)の人々の視点が反映されにくい傾向にありました。
しかし、現代は多様性が重視される風潮にあり、企業にも年齢や性別、人種、国籍にかかわらず、誰もが安心して働ける環境を整えることが求められています。
インクルーシブデザインは、これまで見過ごされがちだった人々のニーズや価値観に深く寄り添った上で、より多くの人に「使いたい」と思わせるものを創造し、新しい価値を取り込むことを主な趣旨としています。
ユニバーサルデザインとの違い
インクルーシブなオフィスは、しばしばユニバーサルデザインを採用したオフィスと混同されがちですが、両者には大きな違いがあります。
ユニバーサルデザインは、これまでの社会設計で考慮されにくかった人々、とりわけ身体的・認知的な障がいのある人々も含め、できるだけ多くの人が使えるようにという思いが込められたデザインです。
既に確立されたルールや基準を参考に、利用にあたっての壁をできるだけなくすことが主な目的です。
一方、インクルーシブデザインはただ利用の壁をなくすだけでなく、その人々のニーズや価値観に応えつつ、新たな価値を生み出すことを主な目的としています。
そのため、インクルーシブデザインは確立されたルールや基準のみならず、対象となるユーザーをデザインの過程で積極的に取り入れ、その声を採用することを重視しています。
2.インクルーシブなオフィスに欠かせないニューロダイバーシティへの配慮
インクルーシブなオフィスづくりに欠かせない重要な要素として、ニューロダイバーシティへの配慮があります。
ニューロダイバーシティとは、脳や神経を意味する「ニューロ」と、多様性を意味する「ダイバーシティ」を組み合わせた造語です。
脳や神経の働き、それに由来する一人ひとりの特性の違いを豊かな多様性(個性)として捉えて相互に尊重するとともに、それぞれの強みを社会で生かしていこうという概念です。
ここでいう特性とは、例えば、自閉スペクトラム症や注意欠如・多動症(ADHD)、学習障がいといった、情報の受け取り方や処理の仕方の多様な個性を指します。
これらは従来、特定の能力の課題や優劣として見なされがちでしたが、その考えを改め、これまでにない新しい価値や視点を生み出す源泉として捉えようというのがニューロダイバーシティの考え方です。
実際、こうした多様な特性や感性を持つ人々の視点を取り入れることは、創造的な思考やアイデアの獲得につながるといわれています。
ただし、誰もがその持てる力を最大限に発揮して心地よく働くためには、それぞれの特性に寄り添った物理的な職場環境の整備や、柔軟な働き方のサポートが必要不可欠です。
具体的な例として、以下のような要素に配慮したオフィスづくりが求められています。
- 視覚・聴覚・嗅覚への配慮
- 外部刺激を遮断できる空間
- 選べる自由のあるオフィス
ADHD(注意欠如・多動症)をはじめとする豊かな特性を持つ人々の中には、周囲の音や光、香りを人一倍敏感に受け取る「感覚過敏」の性質を持つ方も少なくありません。
そのため、オフィスの照明や騒音、空気の質などについて、一人ひとりが心地よいと感じる状態を自由に選べるような工夫を取り入れることが推奨されます。
また、これらの刺激を遮断できる空間があると、気持ちを落ち着かせやすくなるでしょう。
さらに、個々の特性に応じて働き方や働く場所を選べる自由度の高さも求められます。
3.インクルーシブなオフィスづくりのポイント
ここからは、インクルーシブなオフィスを作るために意識したいポイントや、具体的なアイデア例をご紹介します。
個別ブースの設置
外からの刺激をできるだけ遮断できる個別ブースを設置すれば、特性を持つ方の気分を落ち着かせるスペースとして活用できます。
視線の遮断や防音にこだわるのなら、天井まで届く壁で四方を覆う完全個室ブースがベストですが、この場合、消防法の規定により個々のブースに火災感知器やスプリンクラー、放送設備などの設置が必要になります。
パーティションで区切る半個室にすればブースごとの配慮は基本的に不要ですが、騒音対策としてノイズキャンセリング機能付きのイヤホンやイヤーマフの使用を許可するルールも検討した方が良いでしょう。
光に配慮したデザイン・レイアウト
感覚過敏の人は照明の変化に敏感なため、スペースによって明るさの度合いに差が生まれないよう、オフィス全体でできるだけ自然光を採用するレイアウトを意識してみましょう。
例えば、ガラス製のパーティションを導入すれば、窓からの光を遮るものがなくなり、自然光をより多く取り込めるようになります。
窓がない、あるいは小さくて採光に限界がある場合は、調光器付きのLEDランプを配置してカバーをする方法もあります。
落ち着きのある内装デザイン
赤や黄色などビビットな色合いは外部刺激の原因となることがあるため、壁や天井、床、オフィス家具などは落ち着いた色で統一するのが理想です。
具体的には、茶色やベージュ、淡いパステルカラーなどを上手に組み合わせると、オフィス全体が落ち着いた空間になります。
ただし、色の好みには個人差があるため、あらかじめ従業員にヒアリングして意向を尋ねることも大切です。
動線への配慮
車いすの方や視覚障がい者の方が問題なく移動できるよう、動線への配慮も必要です。
具体的には、車いすでもスムーズに移動できるゆとりのある通路幅にする、床の張り分けや点字サインなどで動線を明確にするなど。
スロープを設置する場合は勾配を緩やかにし、下った先に衝突を避けるためのスペースを確保するなどの配慮を取り入れることも大切です。
4.まとめ:誰もが働きやすいインクルーシブなオフィスづくりを目指そう
インクルーシブなオフィスは、現代社会に求められている多様性の実現に適したオフィスとされています。
これまでマイノリティとして社会の主流から距離があった人々のニーズや特性に寄り添ったオフィスづくりは、誰もが働きやすい理想の職場となり、新たな価値やアイデアを生み出す場所にもなり得ます。
ただし、既存のオフィスにインクルーシブなデザインを採用するのは簡単なことではなく、多様な方々の視点や専門的な知識が必要です。
「オフィスにインクルーシブデザインを採用したいけれど、どこをどうすれば良いか分からない」という場合は、オフィス改装のプロに相談することをおすすめします。
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